2022/09/09 22:21
2022年、年が明けて、冬の終わり、
アーサーさんからの電話を受けた私は、想わず言った。
「 な ん て こ っ た ! 」
今年デビュー20周年を迎える一青窈さんの、
名曲「ハナミズキ」、その曲をそのままに描くバイリンガル絵本、
「ハナミズキ A Hundred Years」(今人舎)の
絵を担当させていただくことが、その時決まったのだ。
もうひとごとではいられない。わたしが描くのだ。
そして、ちょうど桜の頃、
窈さんとそのファミリー、今人舎の中嶋さんとその娘さん、アーサーさん、
皆が島根の我が家へ、打ち合わせにやって来た。
我が家の満開の桜の木の下で、皆でござを敷いて、お花見した日が、
昨日の事のように想い出される。
子どもたちも皆、すぐに友達になってはしゃいでいた。
その時、窈さんがわたしに話してくれた、「ハナミズキ」の原形となる詩を書いた、
2001年9月11日、同時多発テロの日の当時の想い。
その詩をうけて、英訳をされたアーサーさんの「A Hundred Years」に込めた想い。
それぞれを胸いっぱいに受けとった私は、『もう恐いものはない。やるぞお!』と、
心に熱いものが灯ったのだった。
「ハナミズキ」の詩に込められた、今まで知らなかった本質を感じ、
なぜ、今、この絵本が私のところにやってきたのかも、フッと腑に落ちた感じがした。
ラフ画を描いている時から、詩に込められている窈さんの願いが、私の願いとリンクして、
今の時代に生きる世界のあらゆる人々への手紙のようになっていった。
色付けは、友人のお父さんのかたみの日本画用具一式を譲り受け、岩絵の具を使って描き、
地元広瀬の馴染みの職人さんの和紙がそれを優しく受け止めてくれた。
作画作業もまた、とても実り多く、私にとって楽しい作業だった。
今までは自分一人でやっていた絵本の制作(手刷り手製本での絵本の制作)。
作者が3人、編集者さんも居てくださって、話し合い、歌詞の世界へ入り込んで、だんだんと深めて、
作り上げていく制作の過程が、とても新鮮で、学びの多い時間だった。
ひたすらに絵描いて、描いて、描き続けた日々。
「ハナミズキ A Hundred Years」のことだけを考えて暮らしていたこの半年間は、とても充実した毎日だった。
姉のようにどーんと、私に作画をまかせてくださった、窈さん。
兄のように優しく、時にズバッと、私の絵を導いてくださった、アーサーさん。
そしてまた、もう一人の姉のように細やかに、絵本のできていくさまを解き、
寄り添ってくださった、今人舎 代表 中嶋舞子さん。
このお三方には、感謝の気持ちでいっぱいです。
そばで見守ってくれた、家族と友達にもありがとう。
この出会いと制作の全ては、私にとって人生の宝物です。
絵本『ハナミズキ A Hundred Years 』が、
この複雑な時代を超えて、たくさんの人に、愛される本に成長していくことを想って。
2022年 秋 原画を描き終えて
ねっこかなこ
〈 今後の主な動き 〉
2022年10月8日から、紀伊国屋新宿本店(東京)にて先行販売開始、そして、地元島根県安来市の書店 子どもの本 つ〜ぼ でも10月10日から先行販売される。
10月15日より、同じく 子どもの本 つ〜ぼ にて10日間の絵本原画展を開催。初日には、アーサー・ビナードと共に出版記念講演会を行う(詳しくは、ねっこかなこのInstagram、Facebookをご覧ください)。
10月19日、出版記念イベント、紀伊國屋新宿本店にてミニトーク&サイン会開催。
絵本は、10月20日より、全国一般発売開始となる。
11月2〜9日まで、今人舎のある東京都国立市にて絵本原画展、お話し会&サイン会開催。
詳しくは、
今人舎Twitter https://twitter.com/imajinsha/